光の花は風に吹かれて
リアは部屋に足を踏み入れて、３人のクラドールの様子を見て少し驚いたように立ち止まり、そして眉を下げた。

「ごめんなさい……また、ルカが散らかしてしまったみたいで」
「いえ……私のせいなので、お気になさらずに」

ペコリと頭を下げるリアに、セストは首を振る。

「それよりお食事は済ませましたか？もう夕食も出来上がっているかと思いますので……」
「いえ、セストさんたちに先に食べてもらおうと思って呼びに来たんです。ずっとルカを見ていて疲れたでしょう？」

こういうところは直らないのだろうか。王家専属クラドールを続けているとはいえ、リアは王妃なのだから、リアが先に食事をする方が自然なのだが。

「それに、ローズさんがお待ちかねですよ」

セストの言いたいことを察してクスッと笑ってから、リアは扉の方へと視線を向けた。

そこではローズが開いた扉の隙間から中の様子――ピンポイントでセストの様子だけれど――を伺っていた。セストと目が合うと、ニコッと笑って手を振ってくる。

――現実では笑っていようって

また、その言葉がリフレインする。

交流会の翌日、リアが産気付いたことや健康診断の準備、交流会のために遅れた仕事など……忙しかったこともあり、どうもタイミングを逃してしまったように思う。

あれから何も聞けないまま日々が過ぎて、ローズもそのことに触れてこないまま彼女には笑顔が戻っている。

「あとは私が引き受けますから」

そう言ったリアはすでにセストが拾って束ねた資料の振り分けを始めており、セストも頷いてローズのもとへ歩を進めた。
< 55 / 130 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop