光の花は風に吹かれて
話題が健康診断のことに移ったことで、セストは先ほどのカルテを思い出した。

聞くなら、きっと今がそのときだろう。

セストは空になったスープ皿をスプーンと一緒に除けてから視線を上げた。

「ローズ様は初めての健診でしたが、困ったことはありませんでしたか?健診結果はどこも異常がなかったようですが」
「えぇ、クラドールの方もとても良くしてくださいました」

暗に交流会のことを聞いたつもりではあったが……もう少しダイレクトに聞かないとローズには伝わらないらしい。

「なぜ――」
「少し体温が高めでしたけれど、季節の変わり目だからよくあることだそうです。気をつけるように言われました」

少し……声が大きかったのは、気のせいだろうか。

「はぁ、あの――」
「向かい合っただけなのに、セスト様もわかるのですか?ふふっ、当然ですね。セスト様は王家専属のクラドールですもの。大丈夫ですよ。心配しないでくださいね」

ニッコリと笑みを向けられてセストは黙り込んだ。

伝わらなかったわけではないのだと、気づいたから。

“聞かないでほしい”と、その表情がローズの心を映していたから。
< 57 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop