光の花は風に吹かれて
翌朝。

セストはいつも通り部屋を出て、その静けさにため息をついた。

そしてフッと苦笑いを零し、額に手を当てる。

自分は今、ローズが待っていなくて確かに落胆した。

昨夜の夕食のときに少し気まずい雰囲気になってしまったからだろうか、と思い、しかしすぐにもう1つの可能性に気づく。

(熱でも出たのでしょうか)

昨日も体温が高いと言っていたし、慣れない場所での生活からくる疲れに季節の変わり目も加わって、本格的に体調を崩してしまったのかもしれない。

そうなると、クラドールとしてはやはり様子を見に行くべきだろう。

(クラドールとして、か……)

また、言い訳を探している。

セストがもう1度ため息をついてローズの部屋へと歩き出そうとしたとき、パタパタと階段を駆け上がる足音がした。

姿を現したのはローズの世話をさせている侍女。

「セスト様!大変です、ローズ様が――」
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