光の花は風に吹かれて
町の喧騒からそう遠くはないはずなのに、とても静かな場所。町とは対照的に多くの緑に囲まれた泉は心を落ち着かせる。
今の季節、木々は葉を落としているけれど、澄んだ冷たい空気は思考をクリアにしてくれる。そんな考え事にピッタリな場所を目指して進んでいくと、チャプ、とかすかに水の音が聴こえた。
先客がいるらしい。
考え事をするのに、誰かがいては気が散る。娘もいないようだし、明日出直すとして城へ戻る方が良いだろう。
そう思ったセストは踵を返そうとしたが、枝の間から見えた黒髪に視線を戻す。その“予感”にそっと歩を進めていく。
その全身が見えたところで、セストは目元を覆った。
彼女が何も身に纏っていなかったからではない。
“嫌な予感”がバッチリ当たったからだ。
日の当たらない城の奥深くで育てられたことを思わせる白い背中に、綺麗な曲線を描く身体。艶のある黒髪は短くなっているが、その光属性の気は確かに彼女のもの。毛先が不揃いなところを見ると髪は自分で切り落としてしまったらしい。
セストは静かに息を吸って、吐いた。水浴びをしている彼女は、まだセストには気づいていない。ならばこのまま……何も見なかったことにしよう。
そんな結論に至ったセストはそっと身体を反転させた。
だが、その瞬間――
今の季節、木々は葉を落としているけれど、澄んだ冷たい空気は思考をクリアにしてくれる。そんな考え事にピッタリな場所を目指して進んでいくと、チャプ、とかすかに水の音が聴こえた。
先客がいるらしい。
考え事をするのに、誰かがいては気が散る。娘もいないようだし、明日出直すとして城へ戻る方が良いだろう。
そう思ったセストは踵を返そうとしたが、枝の間から見えた黒髪に視線を戻す。その“予感”にそっと歩を進めていく。
その全身が見えたところで、セストは目元を覆った。
彼女が何も身に纏っていなかったからではない。
“嫌な予感”がバッチリ当たったからだ。
日の当たらない城の奥深くで育てられたことを思わせる白い背中に、綺麗な曲線を描く身体。艶のある黒髪は短くなっているが、その光属性の気は確かに彼女のもの。毛先が不揃いなところを見ると髪は自分で切り落としてしまったらしい。
セストは静かに息を吸って、吐いた。水浴びをしている彼女は、まだセストには気づいていない。ならばこのまま……何も見なかったことにしよう。
そんな結論に至ったセストはそっと身体を反転させた。
だが、その瞬間――