光の花は風に吹かれて
随分と慌てた様子の侍女と共にローズの部屋へとやってきたセストは、一瞬部屋を間違えたかと思った。

ローズの気がおかしかったからだ。

セストは属性感知に比較的長けていると言って良い。自分の近くにいる者ならば意識を集中しなくともきちんと区別できる。

特にレオやローズ、ルカなど王家の血を引く人間のチャクラは感じ取りやすい。

チャクラ――医療用語で気のこと――は血縁者であると似通っていることもあるが、基本的には人それぞれ異なる。

鍛錬の成果や身体の成長により力の強さに多少変化が現れることもあるけれど、1人の人間のチャクラの性質が変わることはない。

それが、ベッドに寝ているのは確かにローズなのに光属性が感じられない。いくら体調を崩しているからといってこんな属性変化を起こすなどありえない。

(一体どうなって……?)

しかも、今までに感じたことのない種類のチャクラだ。

ローズは確かにルミエール王国の王女――光属性のはずだ。この数ヶ月、セスト自身がずっとそばにいたのだから間違えるはずもない。
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