光の花は風に吹かれて
1ページにも満たない記述は、闇人がルミエール王国の最南端に位置する小さな町、ヴィル・デ・テネーブラ――暗闇の町――にひっそりと暮らす民族であることが書かれている。

彼らの長は天候を操る力を受け継ぎ、人々に畏れられていたらしい。ルミエール王国はその力を抑えるために彼らを隔離し、光属性の男のもとへ闇属性の女を嫁がせていく。

そうして数を減らしていった闇属性。

「攻撃呪文を持たない闇属性が、他民族の脅威になるはずがなかったんです。唯一、彼らの長が“天候を操る”という力を持っていますけれど、今まで悪用されたことはありませんでした」

闇属性の呪文はただ1つ――他属性の呪文効果を無効化する能力だ。ただし、光属性には効かない。光が闇を照らして消してしまうから。

「使っても、長が殺されてしまえば呪文も解除されますからね」
「はい。光属性という対極の呪文がある限り、彼らの暴走は止められます」

だから光属性に対しては遺伝も劣。だが、実際は闇属性という属性がなくなるわけではなく、光属性に包み込まれてしまうだけのようだ。

ローズは光と闇のハーフで、遺伝量としては同じ。

「体調を崩したことで均衡が崩れた……ということですか?」
「そうだと思います」

リアが頷き、セストは本を閉じた。
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