光の花は風に吹かれて
研究室を出てローズの部屋へと戻ると、彼女はゆっくりと食事をしていた。

解熱の呪文で落ち着いたようで、気の流れも正常に戻っている。

ローズはセストに気づくとニコッと笑って、スプーンをトレーに置いた。

「ごめんなさい。今日はお休みなのに、私のせいで……」
「いえ……」

セストは首を振ってベッドに近づき、椅子に座った。

休日と言ってもセストは毎日の習慣で朝早く起きるし、昼間も研究室にこもっていることが多く、結局仕事をしているのと変わらなくなってしまう。

「……隠していたわけではないのです」

ローズは少し寂しそうに笑って言った。

「私は難しいことはわかりませんけれど、闇属性も持っています。お母様が闇属性なのです」

細い指先で額をなぞってから、フッと息を吐く。

「でも、ハーフの私は闇属性の呪文を使えないですし、普段は光属性として認識されます。私も自分は光属性だと思っています。ただ、体調を崩すと光属性が弱まるみたいで……」
「えぇ、驚きました。闇属性は唯一の劣性遺伝子ですから、もう過去のものかと思っていました」

セストの言葉にローズが頷く。

「おっしゃる通り、闇人はもう過去の民族です」

その声色に、セストはハッと顔を上げた。ローズはぼんやりと前を見据えていて、しかし、その琥珀色の瞳にはきっと……何も映っていないだろう。
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