光の花は風に吹かれて
「お母様が今生きている最後の闇人です――」

同時に、ローズの母親は最後の長――ヴィル・デ・テネーブラの巫女――だったという。純粋な闇属性。闇の呪文と天候を操る最後の闇人。

「元々生活の制限を受けていた闇人を滅そうという計画はお父様の案だったそうです。最初からお母様の能力だけを欲していたのかはわかりませんが、その争いの中、当然お母様と対峙する場面があったのでしょう」

ダミアンはローズの母親を気に入って後宮に入れ、ローズが生まれた。

他の者は皆殺されて――

「私は何も知らなかったのです。お母様がどうして悲しい目をして私を見るのかも、どうして泣くのかも……お父様がどうして私を可愛がっていたのかも、何もっ!」

ローズが両手で顔を覆う。

あぁ……また、彼女は泣いている。

セストの胸がバラの棘が刺さったかのように痛む。

「お母様は、目の前で……っ、愛する人々を殺されたのだとっ……憎い男性の子供を産んで、それなのに、っ…………私をひどく扱ったことなんて、1度だって……なかった」

ローズは肩を震わせて泣いた。セストは彼女に手を伸ばしかけて――

「っ、ごめんなさっ……少し、1人にして下さい」

震える声でそう言われて、その手を引っ込めた。

涙を拭って食事のトレーを差し出すローズは、やはり“何も聞かないで欲しい”と言っているようで……セストはトレーを受け取って静かに部屋を出た。
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