光の花は風に吹かれて
「でも、このお城でローズさんがセストさんと過ごしている時間は本物でしょう?」
「しかし――」
「私ね、記憶がなかったとき……」

セストの言葉を遮ったリアはフッと笑った。

「自分の本当の気持ちがわからなかった。何が本物で、何が偽物なのか。でも、レオと過ごしていくうちに、レオに触れるとドキドキして、熱くなることは“今”起こっていることなんだって、今の私が経験していることなんだって気づいたの」

鮮明に覚えている。リアがセストに記憶修正の鍛錬を頼んできたとき……彼女の瞳に迷いはなかった。

もう1度、レオに恋をしているのだと――そう思った。

でも。

「レオ様とリア様は元々婚約者で、恋人でした。私はただ、ローズ様を利用しただけ。利用された人間が自分を利用した人間を慕うと思いますか?」

答えは、ノーだ。

「思うよ。私はエンツォに“利用された”んだよ?でも、エンツォを憎んだり嫌いになったりしない」
「それは貴女が優しいから――っ」

リアと同じように思える人間ばかりではない。

「それに、その言い方だとセストさんはローズさんに嫌われたくないって言っているように聴こえるよ」

セストはそう指摘されてグッと唇を噛んだ。
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