光の花は風に吹かれて
否定できない自分がいる。

ローズの記憶を正したら軽蔑されるだろう、と……諦めに似た気持ちになることがあるから。

何かと理由をつけて、彼女の記憶修正を先延ばしにしているのも本当は……それを恐れているのだということにとっくに気づいている。

だが、それは果たして本当にリアの言うような“恋”なのだろうか。ただの同情、そして自分が偽りを与えてしまったという罪悪感なのではないか。

「悩んでいるのは、もう花が育っているってことでしょう?」

リアは沸いたお湯で紅茶を淹れて、カップをセストの前のテーブルに置いた。

「最終的に恋じゃないってわかることになるかもしれない……でも、だからって花が咲く前に捨てたりしないで。葉をつけていくことを、恐れないで」

それからリアは机の上の本をセストに差し出した。いくつかのページに付箋がつけられている。

「ローズさんは夢の中のセストさんを追いかけて来たんだよ。きっかけが偽りでも、ローズさんの行動は本物。今、現実でセストさんと向かい合ってることも。だから“今”は、ローズさんのその真っ直ぐな想いをきちんと受け止めることが、セストさんの責任だと思う」

セストが本を受け取ると、リアはまた優しい笑顔になった。

あぁ、この人には敵わない。

セストが「承知しました」と返事をすると、リアは満足したようでふふっと声を出して笑った。
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