光の花は風に吹かれて
「やっと、見つけました!」

とても嬉しそうに言った彼女は、ギュッとセストの腰に回した手に力を入れた。

「ぐ……あ、あの、離して、いただけますか?」
「嫌です!私は貴方を探していたのです。逃げないでください」

ぎゅううううっと、締め付けられてセストは彼女の手を叩いた。

「わ、わか、りましたからっ!逃げませんから離してください!」

なんとかそう叫ぶと、彼女はようやく手を離してくれた。ホッと息をついて、恐る恐る振り返るとニッコリと笑った彼女と目が合う。

セストは仕方なく、上着を脱いで彼女に着せた。一応、セストも男なのだ。こんな格好で目の前に立たれると、精神衛生に……支障をきたす。

気を取り直すように咳払いをして、セストは口を開いた。

「こんな場所で、一体何をされているのですか?」
「水浴びを……」
「そうではなく!」

ニコニコとしたままの彼女にセストは天を仰いだ。

数ヶ月前の自分を呪い殺してやりたい。だが、あれだって自分はレオやリアのために行動したわけであって、こんな仕打ちはひどいではないか。

「あ、私、貴方のお名前を知らないんです。教えていただけますか?」
「……セスト・アルベス。ヴィエント王国国王側近、兼王家専属クラドールです」

セストが自己紹介をすると、彼女はうっとりとセストを見つめた。

「まぁ!レオ様の側近の方でしたの。お会いできて光栄です。ずっと、夢でしかお会いできなかったから……」
「そうでしょうね。本当は、夢でもお会いすることはなかったはずなのですが…………とにかく、城へお越しいただけますか、ローズ様」
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