光の花は風に吹かれて
しばらくの間ローズもセストも黙ったまま、穏やかな春の風だけが微かな音を立てて、2人の髪をなびかせていた。

――話したいこと、聞いてもらいたいこと

確かにある。でも、聞かないで欲しいという態度をとったのは紛れもなくローズだった。それなのに、今更どう切り出せばいいのだろう。

何より……すべてを話して、ローズはセストに何を求めるのだろうか。

同情して欲しい?

そのまま、同情でも哀れみでも何でもいいから……セストの気持ちが欲しい?

「……1つ、お聞きしたいことがあります」

口を開いたのはセストだった。

ハッと顔を上げると、セストはじっとローズを見つめていた。

ローズが言い出しにくいのに気づいていて、セストからきっかけを作ってくれるのだと……すぐに理解した。

けれど、なんだかその視線が怖くて微かに頷くのが精一杯で、ローズはすぐに俯いた。

「貴女と前議長の子息、パトリス様の婚姻は、前国王で貴女の父親でもあるダミアン様のご希望。そして今までの貴女の言葉からその目的が子を生すことだと察しますが……そこにどれほどの価値があったのでしょうか?」

価値――その言葉に自分でも驚くほど肩が揺れた。
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