光の花は風に吹かれて
ローズは震えだした指を隠すように膝の上で拳を握り、呼吸を整えようと努めた。

「仮に――いえ、遠回しな言い方はもうやめましょうか」

セストは大きくため息をついた。

「パトリス様もハーフの闇人でいらっしゃいますね?ですが、貴女方の子供が純粋な闇人として生まれる確率は4分の1です」

光属性が優性遺伝子A、闇属性が劣性遺伝子a、劣性遺伝子が表に出るのはaaの組み合わせのみ。

「可能性としては“闇属性”が生まれるまで子供を望むつもりだった。もしくは――」

そこで言葉を切ったセスト。ローズは唇を強く噛んで、ようやく顔を上げた。

セストは優秀だ。彼の調査もかなりの情報を得ることができるだろうし、頭の回転の速い彼の推測が大きく外れることはおそらく……ない。

「何か他に確実な方法があった」

こげ茶色の瞳から射抜くような眼差しが真っ直ぐにローズへと届く。

ローズはその視線から、セストがすでにすべてを悟っていると確信した。

当然といえばそれまでのこと。セストはヴィエント国王の側近で、伝手はたくさんあるだろうし、ローズの知らない調査の仕方もあるだろう。

何より、セストはクラドール。それも普通のクラドールではなく、ルミエール王国で働く彼らとは比べられないほどに優秀な王家専属。

今の段階ではセストの“憶測”、しかし、ローズがただ頷くだけで“真実”となる。
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