光の花は風に吹かれて
あの日、夫はローズの身体に血が滲むほど乱暴な抱き方をした。「巫女の血をよこせ」と、叫びながら。

そしてすべてを知った。

今まで皆が優しくしてくれていたのは、ローズの中に“闇人の長”の血とチャクラが流れているからだと。

それ以外にローズには価値がないのだと。

「パトリス様は闇人の復活を望んでおられました。お父様からの縁談を受けたのは、チャクラ移植を受けることができるからでした」

夫の目的は、多くの子供を生して闇人を増やすこと、そして闇人を葬ったダミアンの暗殺だった。

これは後宮に戻ってから知ったことだが、パトリスはルミエール王国に生き残っている闇人をまとめる組織のトップだったらしい。

その組織の人間は皆、ハーフやクォーターなどで表向きは光属性として暮らしていたが、秘密裏にチャクラ移植の研究を進めていたようだ。

そこに、すでにチャクラ移植の術を持つダミアンからの縁談が持ち込まれた。

「パトリス様のご家族はお父様の信頼を得ていました。パトリス様の出生を知ったお父様の目的は、お母様の力――天候を操る能力を持つ闇人を育て、国、そしておそらくは大陸を支配しようということでした」

子供が生まれ、チャクラ移植が成功した暁には王家の血を引き継ぐからと適当な理由をつけて城で育てる。ダミアンに従順な“人形”となるように。
< 89 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop