光の花は風に吹かれて
「私には子供ができませんでした。でも、パトリス様には他にも女の方がいらっしゃって……」

夫の愛人たちは皆、ハーフの闇人であった。隠し子もたくさんいたのだ。他にも組織内で産ませた子供がいて、パトリスはその全員にチャクラ移植を受けさせた。ローズと結婚してからダミアンが用意したクラドールを“買って”。

「子供はたくさんいたはずです。でも生き残ったのはそのうちたった2人だったそうです」
「なるほど。人数が増えれば情報が漏れやすくなるのは必然です。それで、貴女は後宮に戻されたのですね」

それは、ローズにしてみれば突然で。だが、最初は助けだとも思った。

ダミアンが夫の暴力に気づいてくれたのだと――そんな暢気な考えだった自分はなんと愚かだったのだろう。

後のことは知らない。だが、彼らがもうこの世にいないことくらいはローズにもわかる。

「その後、1度だけお父様にお会いしました。お父様は今まで見たことがないような表情で私を見ていました。“役立たず”と、それだけが今も耳に残って――っ」

子供を産めない。王家を脅かそうという夫の悪事にすら気づかない。

役に立たない、利用価値のない娘。
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