光の花は風に吹かれて
セストはじっとローズを見つめたまま動かなくて、ローズもセストを見つめ返して動かなかった。

やがて、セストがフッと息を吐いて微かに笑った。

「同情が欲しいですか?」
「え……?」

何を言われたのかすぐには理解できなくて、ローズは困惑した。

「ち、違います!私は――っ」
「そうですか」

セストが指の背でそっとローズの頬を撫でる。

(え――?)

これは……夢、だろうか。

いや、今は現実にセストと向き合っているはずなのに。

デ・ジャヴ――?

「違うのなら、私の返事はただ1つです」

セストの顔がどんどん近づいてきて、彼の吐息が感じられる距離になったとき、セストの右手がローズの額に触れた。

「蕾を吹き飛ばすこと、お許し下さい」
「セ――」

ローズの呼びかけはセストの唇に吸い込まれ、同時に脳が風に吹かれるように揺れた。
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