光の花は風に吹かれて
ローズはふらりとその場に膝をついた。

呼吸が荒いのは、セストが彼の記憶を交えてローズの記憶修正を行ったから。

「私が貴女に夢を与えたのは、貴女に利用価値があったからです」

ローズは震える指先で唇をなぞった。

つい先ほどまで温かかったはずのそれは、驚くほどに冷たくなっていた。

「花は、咲きませんでしたね。いえ……咲くわけがなかったのです。貴女の気持ちの種が、偽りなのだから」

偽り。

夢。

ずっと……ローズは夢の中で生きていた?

「さようなら」

ローズの視界からセストの靴が消えて、ローズの瞳から頬へ一筋の涙が伝った。

さっきまでハッキリと耳に届いていた春の暖かい風の音が、聴こえない――
< 95 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop