金色のネコは海を泳ぐ
『ねぇ、ルーチェ。抱っこしてよ。そしたら許してあげる』

「ね?」と、可愛く首を傾げてくるジュスト。なんだか……ちょっとイケナイ方向に成長し始めた気がする。

「えっと……あ!そうだ!あのね、薬ができたんだよ。飲んでみる?」
『ホント!?』

パッと顔を輝かせたジュストの気が抱っこから逸れたことにルーチェはホッとしつつ、机に置いてあった小瓶を取って差し出した。

『これ……?』

ジュストは戸惑ったようにルーチェを見て、薬瓶に鼻を近づけた。

確かにルーチェも作業を終えたときは「うわぁ……」と、思わず声に出してしまった。かなり強烈な緑色になったからだ。というのも、オーメンタールに漬けてあったリトルノの根がドロドロに溶け出していたためである。

調合中ひどかった匂いは中和されたようだけれど、どんな味がするのだろう。

とはいえ、飲むのはジュスト。

「うん。色は強烈だけど、失敗はしてないよ。匂いもそんなにきつくなくなったし」
『……わかった。飲む』

背に腹は代えられないと思ったらしいジュストの返事は素直なものだった。ルーチェはジュストを抱き上げてベッドに座り、膝の上に座らせると彼の口元に小瓶を近づけた。

「一気に飲むのよ」
『うん』

ジュストは頷いて口を大きく開けた。ルーチェはそこへ緑色の液体を流し込む。すべてジュストの口に入ったところで、ジュストはゴクリと喉を鳴らした。
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