金色のネコは海を泳ぐ
ドサッ

ルーチェはベッドに倒れこんで思わず目を瞑った。背中は布団なので痛くはないが、倒れたときは少し衝撃があって。それに――

「お、重……っ」

ルーチェは押しつぶされそうな感覚に目を開けた。ルーチェの目の前に広がるのは、明るい茶髪。少しくせっ毛なのは、図書館で会ったユベール王子に似ている。

「ルーチェ?僕……」

苦しそうに眉根を寄せていたジュストが目を開けると、綺麗な琥珀色の瞳がルーチェを映した。

少し長めの前髪が17歳という年齢を忘れさせるほど艶っぽく、スッと通った鼻筋に薄い唇。おそらく眠り王子だったのと呪文でネコになっていたせいだろうけれど、17歳の男の子にしては肉付きが足りないように見える。

「あ、なたが……ジュスト?」

夢の中の少年だ。後姿しか見たことはなかったけれど、間違いないと思える。

ジュストは不思議そうに自分の手をまじまじと見つめてからルーチェの頬に触れた。

ドキッとして、ジュストの指先が触れている場所が熱を帯びていく。

「ルーチェ!僕、人間になってる!」

ギュッと、ジュストがルーチェにしがみついた。ネコのときのくせが抜けないのか、ルーチェの胸元に頬を摺り寄せてぬくぬくと。

そこでようやく頭が回り始めたルーチェは慌ててジュストの胸を押し返した。
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