金色のネコは海を泳ぐ
ルーチェはふいっと視線を逸らして時計を確認する。お昼少し前だ。

数時間持てば良い方だろうか……

「ルーチェ」
「な、に――っ!?」

突然、ルーチェの手をジュストが引っ張って、バランスを崩したルーチェはジュストに向かって倒れこむ。

そんなルーチェの腰をジュストは力強く引き寄せて膝の上に乗せた。

「ちょっ!くっついたらダメって何度も言ってるでしょ」
「どうして?」

ジュストの肩を押し返すが、ギュッと抱きしめられていて身体が離れない。ジュストがルーチェの首筋に頬を寄せて、柔らかな髪がルーチェの頬をくすぐった。

「ねぇ、ルーチェ。僕のこと好きでもイジワルはしないで。抱っこしてよ」

どうやらジュストはルーチェが抱っこをしたがらない理由をかなりポジティブに解釈しているようだが……

「あのっ、あのね!17歳の、人間の、男の子が“抱っこ”っていうのはおかしいの。それに、こんな風にくっつくのは、恋人とか夫婦とか……」
「コイビト?フウフ?」

ジュストは少し身体を離してルーチェを見上げた。

「え、えっと……そうだ!貴方のお兄さんとそのお嫁さんみたいな人たちのことよ。恋人はお互いにお互いが好きな人たちのこと。その人たちが結婚したら夫婦になるの」

ジュストが理解できるようにユベール王子を例に出しながら、ルーチェはジュストの身体を押し返して距離を取った。
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