金色のネコは海を泳ぐ
バンッ

「もう!お姉ちゃん、ご飯――」

と、勢い良くドアを開けたアリーチェがそこで言葉を止めた。ノックもせずに入ってきたことを考えると、おそらく階下から何度も呼んだのだろう。

「あ、アリーチェだ」

ジュストはニッコリと笑ってアリーチェに手を振った。キスから意識が逸れたのは良かったが、今度は別の問題が浮上した。

「……誰?」

アリーチェはポカンとしてジュストを見つめている。その視線が頭から爪先までを観察し、ジュストの顔で止まってポッと頬を染めた。

どうやらアリーチェのお眼鏡に適ったようだ。

それからアリーチェはルーチェに視線を移し、ニヤリと笑ってくるりと背を向けた。

「アリ――」
「お母さーん!お父さーん!お姉ちゃんが男の人を部屋に連れ込んでるー!!」

ルーチェの言葉などアリーチェが聞くはずもなく、アリーチェはものすごい勢いで階段を下りていってしまった。

「あぁ……」

ルーチェは目元を手で覆った。この後のことを考えると胃が痛くて昼食どころではない。

「ルーチェ。ご飯できたって。僕、お腹空いた」

そしてこのオトコも……どこまでもマイペースらしい。
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