金色のネコは海を泳ぐ
アリーチェがブリジッタとグラートに報告してしまったため、ルーチェはジュストをリビングへ連れて行った。

どうせ、ジュストが完全に人間に戻ったら隠すこともできなくなるだろうと諦めに似た気分ですべてを話したのだ。

そうしたら――

ルーチェのことを信用していなかった3人はなぜかジュストの登場に浮かれている。

ブリジッタやアリーチェはバラルディ家のアイドルに完全にノックアウトされ、グラートも「俺は息子が欲しかったんだよ」などと言い出す始末。

ルーチェは思いきりチーズケーキにフォークを突き刺した。一口に食べてしまうには少し大きな塊を口の中に押し込んで、席を立つ。

一体何だというのだ。

ジュストと出会ったのも、ジュストについて調べたのも、ジュストが短時間でも人間に戻れるようにしたのも、全部ルーチェなのに。

ルーチェの言うことなど全く信じてくれなかった家族は、ジュストの言うことはホイホイ聞いて!

ルーチェが席を立ったことにも気づかずに盛り上がる3人を見て、ルーチェはもやもやとした気持ちになった。

ジュストだけはルーチェを琥珀色の瞳に映していて、首を傾げる。

「ルーチェ、部屋に戻るの?僕も行――」
「ジュストはお母さんたちにチヤホヤされてればいいわよ!」

思いきりそう言って、ふんっと顔を背けてリビングを出て行く。

イライラする!
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