金色のネコは海を泳ぐ
ルーチェは頭から火が出ているのではないかと思うほどにカッカしながら部屋に戻った。

もうすぐテオが薬を受け取りにやってくる。

引き出しから薬を取り出して、またドアへ向かおうとするとジュストが入ってきた。

「ルーチェ 、どうして置いてくの?僕――」

と、甘えたように近寄ってきたジュストの雰囲気が少し変わる。ルーチェはその視線が手元に注がれていることに気づいて、それをスカートのポケットに入れた。

そのまま無言でジュストの横を通り過ぎようとすると、腕を掴まれた。

「ちょっと!もうすぐテオが――」
「ダメ!」

ジュストが大きな声を出してルーチェは思わずビクッとしてしまった。

「テオに会ったりしないで!テオのお願いを聞いたりしないで!僕、嫌だ!」
「な、に……言ってるのよ!訳わかんない!」

確かに惚れ薬のことは断り損ねたけれど、テオは同級生でお互い何かあったら助け合うことは普通だ。

それに、ジュストがテオを嫌っているからといってルーチェまで身の振舞い方を強制される筋合いはない。

「子供みたいなこと言わないで」
「ねぇ、どうしてイジワルするの?僕のことが好きだったら、優しくしてよ。僕、イジワルは嫌だよ」

イジワルするな、好き、優しくして……

「もう!!」

ルーチェは先ほどからイライラしていたせいもあって、乱暴にジュストの手を払った。

「優しくしてほしいなら、してくれる人のところへ行けばいいでしょ!」

ジュストに負けないくらいの大きな声で言い捨てて駆け足で階段を下りた。
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