金色のネコは海を泳ぐ
玄関を出て、息を整えようと呼吸をしているとパタパタと足音が近づいてくる。

「ルーチェ。悪い、なんだか急いでるみたいだけど都合悪かった?」

どうやらすでに近くまで歩いて来ていたテオは、勢い良く出てきたルーチェを見つけて走ってきてくれたらしい。

「ううん。違う……はい、これ」

ルーチェは首を振ってポケットから小瓶を出してテオの手に乗せた。

「これ……?やっぱり、俺は薬の調合がうまくないんだな。色が全然違う」

苦笑いをしたテオは「ありがとな」とお礼を言う。

「でも、効くかはわからないよ」
「うん……なぁ、ルーチェ」

少し真剣になったテオの声。ルーチェはテオとしっかり視線を合わせた。

「お前は……好きな奴、いないの?」
「え……?」

突然の質問。ルーチェは速い鼓動を抑えるように胸に手を当てた。

どうして――?

違う。

鼓動が速いのは、階段を駆け下りたせいだ。

階段を駆け下りなくてはいけなかったのは、ジュストが子供みたいなことを言ったせいだ。

だから、ジュストの顔が浮かんだ。ただ、それだけ……
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