金色のネコは海を泳ぐ
「へ!?」

急に後ろへと引っ張られて、ルーチェは目を瞬かせた。次の瞬間には、ジュストがルーチェの肩から手を回してガバッと抱きついてくる。

「えっと……誰?」

テオも驚いて目を見開いている。

「僕はジュスト。僕とルーチェはコイビトで、僕はムコにくるの」
「は……え!?恋人?婿!?」

テオは更に目を大きくしてルーチェとジュストの顔を交互に見た。

「違っ!違うの!テオ、ジュストは――」
「僕、君のこと嫌いだから!」

ジュストはそう言ってルーチェに回した腕に力を込めた。

「ちょっと、ジュスト!」

ジュストの言葉を否定しなくてはいけない。ジュストから離れなくてはいけない。けれど、そのどちらもジュストが許すことはなく、テオを睨み続ける。

「君はルーチェにイジワルされたことがある?」
「へ?イジワル……?ない……けど」

困惑したようにテオが眉を顰める。

「ほら!ルーチェは君のこと嫌いなんだ!僕にはいっぱいイジワルするんだから!」
「……う、ん……?」

嬉しそうに声を弾ませるジュストと首を傾げるテオ。

どうやら完全にジュストの中でイジワルが“好き”の基準になってしまっているらしい。

「ルーチェは僕のこと好きだし、僕の方が君よりルーチェのこと好きだよ。ルーチェのこと、取ったら許さない!」

最後は噛み付くかのような勢いでテオに向かって叫び、ジュストは軽々とルーチェを抱きかかえて玄関のドアを閉めてしまった。
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