金色のネコは海を泳ぐ
「カロリーナさん!どうぞー」

ルーチェが大きな声で呼ぶと、若い女性が診察室に入ってきた。少し顔色が悪く、足取りも重い。

「顔色が良くありませんね……どんな症状がありますか?」
「頭痛が、少し。食事もあまり食べたくなくて」

ルーチェは症状をカルテに書き込んでからカロリーナの診察を始めた。

「……風邪ですね。トラッタメントを施しますが、一応、頭痛薬と解熱剤も出しておきますね」

診療所で呪文治療を受ければほとんどの場合きちんと症状が治って家に帰れる。だが、症状が重い場合はすぐにまた同じ症状に見舞われることがあり、その場合は薬での治療が必要となる。

ルーチェはカロリーナの袖をそっと捲くって腕に呪文を入れた。

カロリーナの眉間によっていた皺がだんだんとなくなって、顔色も良くなっていく。

「はい。それでは受付でこれを提出して薬を受け取ってください」

メモ用紙に処方薬の名前を書いてカロリーナに渡す。彼女は「ありがとうございました」と言って診察室を出て行った。

「手際が良くなったわね。トラッタメントも中間試験には間に合いそうだし」

隣でルーチェの監督をしていたブリジッタが笑顔で言った。

「うーん……そうだといいけど」

ルーチェはカルテを完成させて席を立った。

「あら、大丈夫よ。貴女はもう少し自信持ちなさい。あ、今日はこれで終わりだから掃除お願いね?私は買い物に行って来るから」
「わかった」

ルーチェはカルテを棚に戻して診察室の片づけを始めた。
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