金色のネコは海を泳ぐ
「浮気も不倫もしてないわよ!」
「本当に?」

そもそも、ジュストとルーチェの関係が――ということは、おそらく今はわかってもらえないのだろう。本人にも、もう何度も説明した気がする。

「はぁ……うん、してない。してないからさ、勉強しよう」
「うん」

ルーチェがペンを取って参考書を開くと、ジュストもペンを取る。だが、ジュストはノートを開かずルーチェの左手を掴んで引き寄せた。

「ちょっと、何?」

ジュストは袖を捲くってルーチェの腕に何かを書き始めた。

「……J……U……S、T……E………って、なんで自分の名前を私の腕に書くのよ。ノートがあるでしょ」

大きく、かなり曲がった文字だが紛れもなくジュストの名前だ。

「ルーチェがウワキしないように僕のシルシをつけた。えーっと、シルシがあるとダンナは嫌なんだって。あれ、ダンナって何だっけ?」

……いろいろ間違っている。

だが、やはりこれもそっとしておこう。あまり真面目に答えると墓穴を掘りかねない。

「そうなの。じゃあ、もう安心したでしょ。勉強するよ」
「……うん」

ジュストはなんとなく腑に落ちない顔でノートに書き込みを始めた。
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