金色のネコは海を泳ぐ
『嫌だ!』
「――イタっ」

バチッと大きな音がして、ルーチェは思わずジュストから手を離した。じりじりと熱い右手を左手で押さえる。

そして、かなりの痛みに涙目になったルーチェのぼやけた視界で、ジュストは薬を飲み干してしまう。

数分後、人間の姿になったジュストは今まで見たことがないような鋭い目つきでルーチェを見た。

「な、何……?」

整った顔に睨まれると迫力がある。ルーチェはまだ痺れる手を押さえたまま後ろへと足を引いた。

「僕は人間だよ。ネコじゃなくて、人間だよ」

いつもの軽い調子とは違う、真剣な声。

ルーチェはゴクリと唾を飲み込んだ。

「ルーチェは僕がわからないと思ってるんでしょ?でも、ちゃんとわかるんだよ。ルーチェが、僕のことをネコだって思ってること」
「……っ」

ルーチェは口を開いて――でも、出てきたのは否定の言葉ではなく微かな息だけ。喉がカラカラに渇いて痛い。
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