金色のネコは海を泳ぐ
「ルーチェ。僕、ネコじゃないよ。人間だよ」
「わ、わかってるよ……だから、ジュストのことを人間に戻す方法を探してる」

ルーチェは胸の前で手を握った。

わかっている。

ジュストがネコ扱いされたくないことも、人間だということも。

ただ、彼を人間だと思うとうまく気持ちを消化できなくて。ジュストの一言、一言に、ドキドキしてしまうから。

ジュストが“オトコ”だと……意識してしまうから。

「わかってないよ!」

ジュストは大きな声を出してルーチェの手首を掴んで引き寄せた。

ルーチェを見上げる琥珀色の瞳の奥が揺れて……ルーチェの心を揺らす。

「わかってない。僕がわかること、わかってない!」
「ジュスト、痛っ――」

ルーチェの手首を掴むジュストの手に更に力がこもって、ルーチェは顔を歪めた。

オトコの人の力。

ルーチェは初めてジュストのことを怖いと思った。
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