金色のネコは海を泳ぐ
「僕、一生懸命勉強してる。ルーチェが僕のこと人間だって思ってくれるように。婿にしたいって思ってくれるように」

ルーチェは微かに首を振った。

「……違うよ、ジュスト。それは、今だけだから……」

そう、今だけ。

今はルーチェしかいないから――ジュストがちゃんと人間に戻って、外の世界を知るときがきたら他へ移っていく気持ち。

「あのね、ジュストは他の人から見たらもう立派な男の人だよ。だから、私と一緒に寝たり、抱きしめたり……少なくとも人間の姿では、したら変なの」

1度、深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから説明する。

「ルーチェは?」
「え……?」

ジュストは納得のいかない顔でルーチェを見下ろしている。いや、先ほどよりも……声が低くなった。

「“他の人”じゃなくて、ルーチェは?それって、他の人は僕を人間だと思ってくれてるけど、ルーチェは僕のことネコだって思ってるってことでしょ!?」
「違っ――」

ルーチェの否定の言葉がすべて紡がれる前に、ジュストはルーチェの腰を力強く引き寄せた。
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