金色のネコは海を泳ぐ
「ねぇ……僕、ルーチェが女の子だって、ちゃんとわかるよ?」

ドキッと甘い音と、チクリと刺すような胸の痛みが同時にルーチェに落ちた。

わかっている。

ルーチェだって、ジュストがネコではなくて“オトコ”なのだと。

ただ、ジュストの“好き”を図りかねている。

ジュストの鼓動と温もりがいつまでルーチェに向けられるものなのか、わからない。

わからないから、慣れてはいけないのに。

……目を閉じたらダメなのに。

ルーチェを安心させる温かさを拒否することができなくて。

眠るだけ。今だけ。ジュストを宥めるだけ……

ルーチェはギュッと目を瞑って、ジュストのシャツを握った。

ちゃんと、わかっているから――

「ルーチェ……可愛い。いい子――」

ぼんやりと薄れていく意識の中、ジュストがルーチェの頭を優しく撫でてくれた気がした。
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