金色のネコは海を泳ぐ
ブリジッタはルーチェの非難に気づかないのかニコニコしながらムニエルを口に入れた。

「ジュストはお姉ちゃんのこと大好きなんだね」

アリーチェもニヤニヤしながらルーチェに視線を向けてくる。

ルーチェはため息をついてパンを頬張った。

「ルーチェ?おいしくないの?」
「……別に、普通」

ルーチェの冴えない表情に、ジュストは首を傾げてルーチェの頬に手を伸ばした。

「普通?あんまりおいしくないってこと?ルーチェ、お腹痛いの?いつももっと楽しそうに食べるのに――」

パシッ

ジュストの指先が触れて、ルーチェは思わず彼の手を払いのけた。ジュストの叩かれた手は宙に浮いたまま。ジュストは顔を歪めてルーチェを見つめている。

「ルーチェ」
「お姉ちゃん」

ブリジッタとアリーチェが厳しく固い声を出したけれど、ルーチェはそれどころではなくて。

「――っ、ごちそうさま!」

まだ半分も食べていない夕食を残し、ルーチェは頬を押さえて駆け足で自分の部屋へ戻った。
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