金色のネコは海を泳ぐ
ルーチェの鼓動が正常に戻った頃、背中のドアが何度か揺れて音がした。

「ルーチェ」

やっとノックを覚えた……と、無理矢理に思考を落ち着かせる。

ルーチェはフッと息を吐き出して立ち上がり、ドアを開けた。

「何?」
「おいしくなかったの?」

ジュストはシュンとしてルーチェの目の前に立っている。背はルーチェよりも高いのに、なんだか小さく見えるその姿。

「別に、普通だったってば」
「普通はどっち?おいしい?おいしくない?」

どうしても白黒ハッキリさせたいらしいジュストは焦ったように問う。

ジュストはまだ、 “グレー”という色を知らない。

だから、ルーチェのことも“好き”になる。嫌いじゃないから好き。ただそれだけのこと。

好きの種類がLikeとLoveでは違うことを知らない。

それだけなのに。
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