金色のネコは海を泳ぐ
その日の夜も、ルーチェがトラッタメントの鍛錬を終えて部屋に戻るとジュストがベッドにもぐりこんでいた。

いつもと違うのは……

「な、なんで……?」

ジュストが人間の姿だということ。

穏やかに寝息を立てているオトコに、ルーチェの鼓動が速くなっていく。どうしたって、数週間前の出来事を思い出してしまう。

ルーチェはくるりと背を向けて閉めたばかりのドアに手を掛けた。

「……ルーチェ?」

掠れた声にビクッとして振り返ると、ジュストは薄っすらと目を開けてベッドに手をついた。

気だるそうに起き上がるその姿にドキッとする。

ジュストのくせに無駄に色気を振りまくな、と言ってやりたい。

「ごめ、ん。起こしちゃった?……あの、私、明日の準備、しなきゃ」

うまく、笑えているだろうか。この心臓の暴走を、隠せているだろうか。

「明日……明日から、ルーチェに会えない……」

ジュストはルーチェに真っ直ぐに視線を向けた。琥珀色の瞳に映る感情は、何なのだろう。ルーチェには……よくわからない。
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