金色のネコは海を泳ぐ
「ルーチェさん……は、クラドールなんですよね?ジュストさ――ジュストのことは治せないんですか?」

サラもショートケーキを一口食べてから、ジュストに問いかける。苺はやはり最後に食べるのがルールなのだろうか?そうしたら、ジュストは間違ってしまったことになる。

「ルーチェはまだ研修生だよ。今日は試験があって、大きな町に行っちゃったの……ルーチェは、僕のために薬を作ってくれたけど、時間が経つとネコに戻っちゃうの。今日はもう1個持ってきたよ」

ジュストはポケットに入れておいたもう1つの薬瓶を取り出してテーブルに置いた。

「これ……ですか?」

サラはなんだか困ったような顔をして、薬瓶を手に取った。

「うん。色は変だけど、よく効くんだよ?」
「そう……なんですね」

ジュストはフォークを空になったお皿の上に置いて、紅茶を飲んだ。

「ねぇ、姉様……僕ね、ルーチェの婿になりたいの。どうしたら婿になれるのか、今日はそれをユベール兄様に聞きに来たんだ」

ジュストがそう言うと、サラは一瞬キョトンとした顔になって……それからクスクスと笑い始めた。

何か、変なことを言っただろうか?

「お婿さん、ですか?それじゃあ、ジュストはルーチェさんのことが好きなんですね?」
「大好きだよ。でも、ルーチェはイジワルで……ユベール兄様は、イジワルは好きって言ったんだけど、でも、僕はイジワルじゃなくて抱っこしてほしくて――」

ジュストが一生懸命に訴えているのに、サラはますます笑うばかり。ジュストはムッとして頬を膨らませた。
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