金色のネコは海を泳ぐ
「抱っこ、なんて言ってるうちは無理じゃないの?」

その声に振り向くと、ユベールがリビングに入ってくるところだった。

「おかえりなさい、ユベール様」

サラはスッと立ち上がってユベールのもとへと駆け寄っていく。ユベールは荷物をダイニングテーブルの上に置いてサラを引き寄せ、チュッと唇を合わせた。

「――っ」

その瞬間、サラの頬が赤く染まった。それを見て満足したように笑い、ユベールはサラをその腕に閉じ込めた。

「ただいま、サラ」
「もう……」

そう言いつつも、ユベールから離れようとしないサラは……いつもジュストから逃げようとするルーチェとは違う。

「兄様と姉様だって、抱っこしてる」

ジュストがそう言うと、ユベールはサラの肩を抱きながら向かいのソファに座った。

「これは、抱っこじゃなくて抱きしめてるの」
「……?」

言葉が違うのだろうか。
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