金色のネコは海を泳ぐ
J、U、S、T、E

グラートが1番に教えてくれたのが、ジュストの名前だった。

「ほら。僕、他にもいろいろ文字が書けるようになったんだ。ルーチェの腕は、紙と違ってちょっと書きにくいけど、ちゃんと僕の名前だってわかるよ」
「腕……?くっ、プッ!あっははは!」

ユベールは今日1番の笑い声を上げた。サラも「ダメですよ」と言いつつ、肩を震わせて笑っている。

「どうして笑うの?」

ジュストは何が可笑しいのか全くわからず首を捻るばかりだ。

名前は……いっぱい練習したから間違うはずがない。グラートに褒められたことだってあるのだ。

自分のものには名前を書くようにと教えてくれたのもグラートだし、何も可笑しなことなどないではないか。

それに――

「ルーチェのお母さんの本にも、シルシをつけるとウワキしないって書いてあったんだ!ダンナが嫌なんだって」

あれ?そういえば、ダンナがどういう意味なのかルーチェに聞くのを忘れていた。

「ぶっ!はははっ!もう、君、最高!」

ユベールはとうとうソファをバンバン叩き出した。
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