金色のネコは海を泳ぐ
しばらく笑ってようやく落ち着き始めたユベールはまた深呼吸をして、ジュストに向き直る。

「ジュスト、旦那が嫌なのは浮気相手に印をつけられた場合でしょ?」
「テオのこと?」

テオは印をつけたりしない。ボーラでルーチェと話してはいるけれど……そうだ、ルーチェはまだウワキを続けている。ダメだと言っているのに!

「テオ?とりあえずさ……ルーチェと君が恋人だとする場合、君が旦那――婿――なわけでしょ?だから、印をつけられて嫌なのは君の方になるはずだけど……まぁ、ふふっ……名前が書いてあるなら大丈夫なんじゃない?くっ……」

ユベールはまた思い出したようにクスクス笑う。

「まぁ、面白いからそのままでいいよ。えーっと、それから抱きしめるのが変だって?」
「……うん」

なんだかもやもやしたままだけれど、それは帰ってからもう1度ブリジッタの本を読めばいいだろう。いや、あれはルーチェに捨てられてしまったんだっけ……?

「僕、ルーチェに抱きしめられるとふわふわする。ルーチェは柔らかくて、気持ちいいんだよ。でも、ルーチェは触っちゃダメって言うから……」
「さ、触るのは、その……ダメなんじゃ……?」

サラが真っ赤になりながら答える。

やっぱり、変なのだろうか。

「でも、僕は触りたいよ?ルーチェとくっつきたいんだ」

ジュストが肩を落とすと、ユベールはニヤリと笑ってサラを抱きしめた。
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