金色のネコは海を泳ぐ
「――っ!」

これではルーチェがジュストのことを好きみたいではないか!浮かんだ考えを否定するように、ルーチェはジュストの背中を叩いた。

「ジュスト、もういいでしょ。離れて」
「嫌!僕、ルーチェに会えなくて寂しかった。ジュウデンブソクなの!」

“充電不足”――急に語彙の増えたジュスト。ルーチェの留守の間何があったのだろうか。また変な本でも読んだのか……

「あ!」

だが、ジュストはすぐにルーチェから離れてニコッと笑い、ジュストはグイッと顔を近づけてきた。琥珀色の瞳がルーチェに迫る。

「っ、ちょっ!」

ルーチェは咄嗟に持っていた鞄をジュストと自分の身体の間に入れて距離を取った。

「な、何してるの?」
「キスだよ?」

ジュストはそれが当たり前かのように言って、むしろルーチェが拒んだことの方が変だと言わんばかりの表情だ。

キス――確か、これもジュストは“口と口をくっつける”と言っていたはずだ。ルーチェは訂正していない。

「兄様は帰ってきたら姉様とキスしてたよ?キスは好きな人とするって。ルーチェも、前にキスは恋人がするものだって言ってたでしょ?だから、キスしよ?」

ルーチェはポカンとしてジュストを見た。兄様と姉様、ということは、ジュストは彼らに会いに行ったのだ。

「ルーチェ、あーんして、お腹空いたの?」
「なっ!違うわよ!」

ルーチェは玄関で叫び、ジュストに鞄を押し付けてサッサと階段を上がり始めた。
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