金色のネコは海を泳ぐ
結局、ジュストはルーチェの同伴として参加をすることになった。

受付で「僕はルーチェの婿です」なんて言うから、また誤解を解くのに時間がかかった。

ざわつく会場は綺麗にデコレーションされていて、ここが学校のホールだとは思えない。テーブルには軽食やドリンクも並んでいて、ジュストは興味津々といった様子でキョロキョロしている。

まだパーティが始まってもいないのに受付で疲れてしまったルーチェは会場の隅に置いてあった椅子に腰を下ろした。

「ねぇ、ルーチェ。あれ、グラタンじゃない?」
「ジュスト、まだだから……ちょっと座ってて」

ルーチェがジュストの袖を引っ張ると、ジュストは「わかった」と言ってルーチェの隣に座った。

どうやら本当に“お行儀良く”できるらしい。

ルーチェは安心してため息をついた。チラリと横を見ると、ジュストはやはり瞳を輝かせて会場を観察している。

そういえば、ジュストを大勢の人の集まるところに連れてくるのは初めてだ。

そんな少し幼い反応とは対照的に、きっちりと整えられた柔らかな茶髪は照明に照らされてキラキラして、グラートがいつのまにか買い与えていた余所行きのスーツを着こなす細身の身体も男らしい。

ルーチェの視線に気づいたジュストと目が合うと、優しく微笑んだ顔がなんだか大人びて見えてドキッとした。

「ルーチェ、髪飾りが曲がってるよ」

ジュストはクスッと……やっぱりなんだか艶っぽく笑って、ルーチェの髪に触れた。
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