金色のネコは海を泳ぐ
「そうかしら?」

デボラが真剣な声を出し、ルーチェは顔を上げて彼女を見つめた。

「確かに、少し幼いところがあるみたいだけど……でも、ジュストくんはちゃんと男の人の目をしていたわ」

男の人の目――ルーチェを見つめる琥珀色の瞳。いつもは色々なことに目を向けて、好奇心旺盛で、でも……ルーチェを見つめるときに、たまに見せる熱を秘めたような揺れる色。

それが、“オトコ”だというのなら……

「テオのこと、あんなに威嚇して……独占欲が強いのね。うちの旦那様は、のんびりしているから……ちょっとだけ、羨ましいかも」

ふふっと笑って、デボラはルーチェの頭を撫でた。

「それに、ルーチェ。貴女もそんなにつらそうな顔をして……それ、嫉妬っていうのよ?どう見ても“お姉さん”でいいって表情じゃないしね」

ドクン、と。

今まで目を背けていたことを指摘されて、ルーチェの鼓動が一際大きく音を立てた。

嫉妬……ヤキモチ。

その、意味は――

「あ、ほら。貴女のお婿さん、迎えにくるわよ。それじゃあ、またね?」

デボラは最後に「素直になるのよ」と言い残して旦那さんの方へと歩いて行ってしまった。
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