金色のネコは海を泳ぐ
ゆっくりと手を伸ばしたら、ジュストはその手を取ってくれた。

「ルーチェ、帰る?僕、料理の材料を買い物して帰りたい」
「……うん」

ルーチェが頷くと、ジュストはニコッと笑ってルーチェの手を引いて歩き出した。受付でコートを受け取って、外へと出る。

「僕、ルーチェがワッフル好きだって初めて知ったよ」
「…………うん」

歩きながら、ジュストは何かと話しかけてくれて。

それはいつものことなのに、ルーチェはくすぐったくて、嬉しかった。

「ねぇ、ルーチェ。デボラ先生がね、恋人はいっぱい相手のことを知って、それから婿と嫁になるんだって教えてくれたの」

そう言って、ジュストはルーチェの手を握る手に力を込めた。

その温度は優しくて、温かい。

「もっと、ルーチェのこと知りたい。僕のことも教えてあげるから。いいでしょ?」

ルーチェのことも、それ以外のことも、もっと、いろいろなことを知ったら――?

それでも、ジュストはルーチェを“好き”でいてくれるのだろうか。
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