金色のネコは海を泳ぐ
だが、ルーチェの素肌に触れることができたのは一瞬だった。

「……」

ルーチェの腰には回せなくなった短い手――いや、足?

やっぱり小さくなった顔はルーチェの身体の……おそらく1番柔らかい場所に埋まっている。

ジュストは布団の中でもがいてベッドを降りた。

ルーチェの机に飛び乗って、薬瓶を取り出す。そこで、ふと机の上に開いたままのノートに目が留まった。

『変化の呪文 ×
 薬の効果 ○:持続時間について原因不明
1/27 リトルノの量を少なく調合、持続時間に変化なし(長くなっている?)
2/6  オーメンタール減、以下同文
2/15 リトルノのオーメンタール漬けを止める、以下同文
2/23 ――…』

中間試験が終わってから、ルーチェはジュストの薬の調合について研究していた。その記録が丁寧に書き込まれている。

空いたスペースにも材料の比率計算などが細かく書き込まれていた。

ジュストはページを1枚捲ってみる。

『ルミエール王国の呪文
 政権交代で王族の力の質が変化、呪文もその都度廃れ、開発されてきた
・レフレクシオン:光の反射率を調整、見た目を変える→ジュストの症例とは一致しない
+古代呪文のため使える者がいるかは不明
・その他、姿を変える呪文:存在不明、資料不足』

ルーチェは呪文についても調べてくれているらしい。

光属性の呪文はルミエール国民が使うものだから、マーレ王国には資料が少ないのだろう。

ジュストはページを元に戻して薬を飲んだ。
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