金色のネコは海を泳ぐ
朝食を終えて、アリーチェは学校へ行き、ルーチェたちも診療所へと出て行った。

すでに日課となった洗濯や掃除を済ませたジュストは、リビングのソファに身体を沈めて息を吐いた。

今日のお昼ご飯は何にしよう……

ブリジッタの料理の本を取ろうとマガジンラックに手を伸ばしたところで、ふと彼女がよく読んでいる雑誌が目に留まった。

ルーチェが読んではいけないと怒る、ブリジッタの愛読誌。

だが、ジュストはその表紙の文字に釣られてそれを取り出し、目当てのページを開いた。

『結婚相手に求める条件』

ルーチェがなかなかジュストを婿にしてくれないのは、自分にその条件が揃っていないからかもしれない。

「高身長、高学歴、高収入……?」

ジュストは、背は高いほうだと思う。昨日のパーティでも、テオや会場のほとんどの男性より少し目線が高かった。

体重もブリジッタが最近「やっと標準に戻った」と喜んでいたし、アリーチェはいつも「ジュストはアイドルっぽい」と言ってくれる。

アイドルというのは、女の子が好きな人のことだそうだ。

ということは、ジュストの外見は婿の条件に当てはまっていると思っていいだろう。

問題は、学歴と収入。

勉強はグラートとしているけれど、学校には行っていないし、働いていないからもちろん収入もない。

これは……大問題だ!

ジュストは雑誌をソファにバン、と置いて立ち上がった。

ルーチェの婿になるためには学校に行って、お金を稼げるようにならなければならない。料理や掃除ではダメなのだ。

「っ、ルーチェ!」

ジュストは急いで階段を駆け下りて、ルーチェの診察室へと走った。
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