金色のネコは海を泳ぐ
「勉強がしたいなら、俺が教えるから。家庭教師を雇ってもいい」
「でも……それじゃ、僕はルーチェの婿になれないってこと?」

ジュストの気分はどんどん落ち込んでいく。

「別に、学校へ行っていなくても、お金がなくても、ルーチェの婿にはなれる。ジュストがルーチェのことを好きならな」

グラートはジュストの頭を撫でてそう言った。

「でもっ、女の人は“条件”を重視するんだって書いてあった!僕、ルーチェの条件をクリアしなきゃ、いつまでもネコのままだ」

肉体的にではない。ルーチェは今でもどこかジュストをネコだと思っている節があって……ジュストはもう、どうしたらそれを乗り越えられるのかわからなくなってきた。

何度「好き」と言っても、「違う」と言われて。

一体、何が違うのだろう?

ジュストが条件を揃えていないから?

だから、ルーチェの婿ではない――違う、なのか。

「ジュスト。お前は男だろう?ネコじゃないって、ルーチェもちゃんとわかっているから」
「……」

わかっていない、とはグラートに言えなかった。これ以上、困らせてはいけないだろう。

「わかった。僕、もう寝るよ……」
「あぁ、おやすみ」

ジュストも小さく「おやすみ」と返してルーチェの部屋へと向かった。
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