金色のネコは海を泳ぐ
部屋ではルーチェが呪文の本を熱心に読んでいて、ジュストはそれをチラリと見てからベッドに身体を沈めた。

ルーチェの甘い匂いが鼻をくすぐる。

「ルーチェ」
「ん、何?」

呼びかけても、ルーチェは本に釘付けでジュストの方を見ようとしない。今日は朝からこんな調子だ。

「ルーチェ!」

ジュストはなんだかもやもやした気持ちになって、ベッドから降りるとルーチェの腕を掴んだ。

ルーチェが驚いたように顔を上げるが、目が合うとすぐに顔を背けた。

「僕を婿にしたくないの?」

だから、ジュストを見ようとしないのか。

「ジュスト、あのね、婿は別に私の婿じゃなくても――」
「嫌!」

ルーチェじゃない、誰かの婿?

そんなの嫌だ。

ジュストはルーチェと一緒にいたいのに。どうしてわかってくれないのだろう。
< 222 / 268 >

この作品をシェア

pagetop