金色のネコは海を泳ぐ

1:前編

「はぁ……」

ルーチェは何度目かわからないため息をついた。

今朝届いた中間試験の成績は予想通りトラッタメントの実技でCをとった。それ以外は文句なしのA評価だ。

補習はしなくても良いだろうとコメントには書いてあるが、やはりスピードに欠けるところが大きくマイナスされている。

クラドールのトラッタメントは迅速に行えなければいけない。ルーチェの家のような小さな診療所では少ないかもしれないが、命が助かるか助からないかの患者さんが運ばれてくる事だってないとは言えない。

そんなときにもたついていたら、それだけで生存率が下がる。

だが――

「ルーチェ、紅茶どうぞ」
「あ、うん……」

テーブルに成績表を置いたところで、クッキーと紅茶の乗ったトレーが差し出された。ルーチェがニッコリ笑うジュストからそれを受け取ると、ジュストはそのままキッチンへと戻っていってしまった。

そう、ルーチェのため息の理由は紙切れではない。ジュストの態度の変化だ。
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