金色のネコは海を泳ぐ
「口の利き方にお気をつけなさい!貴方はルミエール王国の王子なのですよ?生きているとわかった今、こんな風に野放しにはできません」

エミリー女王は持っていた扇をビシッとジュストに突きつけた。

「ユベールお兄様が王位継承権を破棄、馬鹿なロランお兄様は地下牢。順当に行けば、王位継承権は第三王子である貴方にあります。城に戻り、王子としての教育を受け、国王にふさわしい人間になりなさい。それまでは私が表に立ちます」

すると、ジュストも負けじとエミリー女王を睨みつけ、ルーチェはハラハラした。異母姉とは言え、相手は女王なのだ。もっと敬うべきなのではないだろうか。

「嫌だよ!僕はルーチェの――っ、ぼ、く……」

勢いをつけて叫んだジュスト。だが、すぐに口を噤んでしまった。

ルーチェの……何?

ドキッとしてジュストの方を見ると、ジュストは唇を噛んで何かに耐えるような表情をしていた。

「ジュスト。貴方は今まで人と関わってこなかったから、この娘に少し優しくされて勘違いしているだけです」

ハッとしてエミリー女王を見ると、彼女はスッと目を細めてルーチェを見た。

「そもそも、一国の王子がこんな田舎のクラドールの娘と……許されないことです。貴方には、貴方にふさわしい妃を私が選びます」

ルーチェは頭を殴られたような衝撃を受けた。

違う。これも、わかっていたことだ。

それなのに、やっぱりそうやって指摘されると悲しくて。

「バラルディ家の皆様にはご迷惑をおかけしました。近く、お礼をお送りさせていただきますわ。さぁ、ジュスト。行きますよ」

エミリー女王は優雅に立ち上がってジュストを視線で促す。
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