金色のネコは海を泳ぐ
その日の夜。

まるでお葬式のような夕食を終えて、ルーチェはベッドに突っ伏していた。

グラートもブリジッタも何も言わなかった。いつもはおどけるアリーチェさえ、事情を聞くと口を閉ざして……何も言ってくれなかった。

ジュストがルミエール王国へ戻らなくてはいけないと嫌でも思い知らされる。

「ルーチェ?」

ノックの音と、ジュストの声に……ルーチェは身体を起こしてベッドに座った。

返事もできないまま固まっていると、控えめにドアが開いてジュストが中を覗き込んできた。ルーチェが起きているのを確認すると、そっと中へ入ってくる。

「……」
「……」

ルーチェはベッドに座ったまま、ジュストはドアのところに立ち尽くしたまま、何も言わない。

何か……言わなくてはいけないのに。

ルーチェは1つ深呼吸をして、少し顔を上げた。
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