金色のネコは海を泳ぐ
「っ、待って!」

背を向けたジュストのジャケットを掴んで、ルーチェは叫んだ。

「い、か……で…………っ。行かないでっ!」

その一言を言ってしまったら、今までルーチェの喉に詰まっていたものが取れた気がした。

「ジュストがいないと寂しいから、悲しいから、泣いてるの!」

次から次へと流れるように――涙も、ルーチェの気持ちも。

「ジュストが一緒に眠ってくれなくなって寂しくて、“好き”が私と違ったらって思って怖くてっ――ジュストが好きなの!好きだから、泣いてるのよぉ」

全部を吐き出したら力が抜けて、ルーチェはズルズルと座り込んだ。

柔らかな海岸の砂が膝に擦れる。

そして――

ふわり、とジュストの匂いに包まれた。

温かくて、優しい……安心する、温度と香り。
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